9.雪の結晶・2



「宗ちゃん。
 雪の結晶は、みんな一つずつ違うんだって」
 燈子が微笑む。

 最近、燈子はあまり大きく笑わなくなった。
 前は、顔のパーツを全部使うようにして、屈託なく笑っていたのに。
 今は寂しそうに笑う。
 二人が一緒にいられなかった間に、燈子は変わってしまった。
 それが、切なかった。

「形がね、全部違うんだって」
 燈子の透明な声がささやく。

 以前の燈子は、元気が良すぎるぐらいで、声が小さいときは病気にかかっているときぐらいなもので、いつでも明るく大きな声で話していた。
 二人が一緒にいられなった間に、燈子は変わってしまった。
 それが、たまらなく……哀しい。
 いとしくて、かなしい。

「そうか」
 宗一郎はうなずいた。

 きっと、少年自身も気づいていない。
 彼自身も、大きく変化したことを。

「光治先輩に虫眼鏡を貸してもらおう。
 外は雪が降っている。
 確かめてみようか」
 宗一郎が言うと、燈子は小さく首を横に振った。

 少年は不思議そうに、少女を見つめた。
 以前は、新しい遊びを提案すると少女は喜んだ。
 でも、今は……。


「宗ちゃんと少しでも長くいっしょにいたい」
 涙色の透明な声が告げた。
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