眼
その眼鏡を通して、あなたは何を見ているの?冬空の下、清浄な気を纏う少女がにこやかに笑う。
そのすぐ後ろを、幸鷹はついて歩いていた。
「今日もいい天気ですね!」
嬉しそうに笑う少女は、今日も元気だ。
天から舞い降りた、尊き存在。
唯一、浄化の力を持つ清廉な神子。
彼女は、見ていてとても微笑ましかった。
幸鷹も笑んだ。
「ええ。
寒くはありませんか?」
吐く息は白く、吹く風は冷たい。
華奢な少女の体を、幸鷹は案じた。
「これぐらい大丈夫です!
私の住んでいたところも、このくらいでしたし」
直後、花梨は小さなくしゃみをした。
その様子に微苦笑しながら、幸鷹は羽織っていた着物を一枚掛けた。
「ありがとうございます」
笑った少女は、とても愛らしかった。
「これぐらい、何でもありませんよ」
青年は穏やかに笑いかける。
そのまま、二人は歩き続けた。
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「幸鷹さんて、どのくらい目が悪いんですか?」
町中を散策している途中。
ふいに、少女が尋ねた。
「え?」
歩みを止め、声の主を見る。
突然の問いに、幸鷹は少し驚いた。
「あ、ごめんなさい。
何となく気になっただけなんです!
あまり気にしないでくださいね」
少女は慌てながら、笑った。
「……そうですね」
ちょっとした悪戯を思いついて、幸鷹は眼鏡をとった。
そして、少女に思い切り近づいてみせた。
「このくらい近づかないと見えませんね」
お互いの息遣いが手に取るように分かる。
すぐ傍の温もりが、肌で感じられる。
そこまで、幸鷹は近づいてみせた。
青年は視線を絡めとる。
瞳の奥に、彼女を閉じ込めるかのように。
「じゃあ、すごく悪いんですね!
うーん、私には想像がつかないな」
にっこりと笑って花梨が言った。
その声を合図に、幸鷹はすっと体を離した。
「そうですか」
自嘲気味に青年は笑った。
「?
どうかしました?」
花梨が、こちらを見つめる。
吸い込まれそうなくらい、澄んだ瞳。
一切の穢れを許さない瞳。
幸鷹は、そっと首を横に振った。
「いえ、何でもありませんよ」
青年は、そっと眼鏡をかけ直した。