清
清らなる人は、天の申し子。春の陽射しに似た、温かな心を持つ至上の存在。
「鷹通さん!」
元気な声が聴こえる。
呼ばれた男は、それに笑って答えた。
「神子殿。
おはようございます」
清浄な空気を身に纏った少女が、出迎えてくれた。
それが嬉しかった。
土御門の邸。
ちょうど、彼女のところに行くところだった。
「おはようございます!
今日も早いですね」
廂を共に歩きながら、龍神の神子が嬉しそうに言った。
「ええ。
少しでも早く、お役に立ちたくて」
「嬉しいです。
やっぱり鷹通さんは、真面目ですね」
同じ言葉だというのに、この少女から出た言葉は素直に喜ぶことが出来た。
多分、少女の無垢な声と優しい表情がそう感じさせるのだろう。
鷹通は、にこりと微笑んだ。
「そうですか?
神子殿には負けてしまいますよ」
「えっ!
私がまじめ、ですか?」
驚いた表情で、少女が見つめ返してくる。
小首を傾げる様子が、とても愛らしく感じられた。
「ええ。
こうして朝早く起きられて、京のために尽くしてくださろうとする。
真面目で、ご立派で、清らかな方だと思います」
思ったことをそのまま口にする。
目の前の少女は、一瞬目を見開いた。
「な、何か恥ずかしいですね。
私はそんな大したことしてないです」
頬をほんの少し染め、少女が苦笑する。
自覚のない彼女は、何と美しいのだろう。
鷹通は心の中で呟いた。
これ以上言っても、悪戯に少女の心を乱すだけだったから。
「すみません、困らせてしまったようですね。
ところで神子殿。
今日はご一緒させていただけませんか?」
本来の目的を、鷹通は伝えた。
「はい!
こちらこそお願いしますね」
花がほころぶように笑った少女に、目を奪われる。
本当に綺麗で、清らで。
どこまでも愛らしい。
鷹通は目を細めて、それをやり過ごした。
「はい、神子殿」
やっとのことで声を出して、鷹通は答えた。
いまだ怨霊が跋扈する京。
その中、一つの心が芽生え始めていた。