13.ためらい



 お母さん、ごめんなさい。
 とーこは悪い子になります。


 とーこは一枚のカードに文字を書きつける。
 それを封筒に入れて、外に出ないようにしっかりとノリをつける。
 とーこは窓を開けた。
 今日の天気は、晴れ。
 都合の良いことに、風が吹いている。
 お陽さまもとーこの味方をしてくれる。
 手紙は出さない方が良い。
 出すなら、もっとちゃんとした形で出した方がまだマシ。
 こんなこと、お母さんが知ったら、悲しむ。
 それに、こんなことしたら、山上でも目立つ。
 でも。と、とーこの目が涙目になる
 我慢した。
 これ以上我慢したら、きっととーこは後悔をする。
 それがわかっているから……。
 お母さんはきっと、また泣く。
 お父さんも悲しむ。
 お父さんもお母さんも大好き。
 でも、それ以上に……。

 とーこは手紙を窓の外に投げた。
 それは紙飛行機の形になり、真っ直ぐに飛んでいく。
 白い軌跡を残しながら、空を飛んでいった。


 とーこは窓を閉めてから、ためいきをつく。
 それでも、とーこは外に出るためにコートを引っ張り出した。
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